「あなたへ」
「蓮」by 多分、S
あの人が優しい理由を知ってるかい?
あなたの悲しみを、
あなたの喜びを、
あなたの痛みを、
あなたの夢を、
受け入れ、
励ましてくれるあの人の事だよ。
時に必要な言葉をかけてくれる、
優しいあの人の事だよ。
なんで、
そんな風に優しいかを考えた事があるかい?
生まれがいいから?
育ちがいいから?
見た目がいいから?
頭がいいから?
満たされた幸せな人生だから?
まさか!
とんでもない!
優しいのは、
沢山傷ついてきたからだよ。
沢山の渇きがあったからだよ。
だから、
あなたの痛みが、
自分の痛みとして分かるんだ。
あなたの渇きが分かるんだ。
あの人は誰にも届かない、
暗い場所で、
たった一人で泣いてきたに違いない。
その悲しみは、
魂の気高さによって、
恨みにも、
優しさにも、
どちらの花をも咲かせるだろう。
魂の気高さは、
最初から与えられたものではない。
魂の気高さは、
見渡す限りの永遠の悲しみの海を、
一つ一つ救い上げようとする意志の事だ。
全ては決まっているからなどと、
分かった顔をしない事だ。
それが、
たとえ真実だとしても、
運命にさえ立ち向かおうとした、
意志の事だ。
あなたに優してくれる、
あの人の優しい手は。
優しいあの人が、
ずっとずっと欲しかった、
優しい手かもしれないよ。
人々を救うために、
千の手を持った千手観音は、
その昔、
どんな小さな生き物でも、
苦しみを背負っているのが見えて、
悲しくて悲しくてしょうがなかったという。
それはまるで、
泥の中に生まれ落ち、
美しい花を咲かせる蓮の様だ。
優しいあの人こそ、
あなたの優しさが必要かもしれない。
人間なんてたいして、
誰もが変わりやしないんだ。
明日くらい、
あの人に優しくしてやろうぜ。