「敗北の時」
私は期限内、
自分なりのまっとうさを貫いた後、
私は私を解放しようと思っている。
空ばかり見上げる日が続いた。
誕生日を過ぎた、17日を迎えた。
そろそろ結末の結果を見届けなければなあ。
強くなれないもんだよ。
どれだけ願っても、祈っても。
どれだけ頑張っても頑張っても。
でも、その景色をそろそろ受け入れなければな。
私は膝を屈して、あらゆる屈辱を心に押し込み、
本心が表には出る事のない、
形式的な民主主義の議会に立った。
しかし、
その議会は開催される事はないと王から伝えられた。
己の魂は、
ありありとその結末を、
見た。知った。理解した。
そして万策が本当に尽きた事を私は理解した。
これ以上は歩く道はない。
この小さな国で私が出来る事は、もう何にもなかった。
目に映る世界はいつもと変わらないようには見えた。
元々、詰んでいた盤面だ。
負け戦と分かって挑んだ戦いだった。
そこから、まあ命の限りやるだけやったさ。
この盤面を私が生み出した訳じゃない。
他人の盤面を私が指揮者気取りで、
動かそうとしたのだ。
ここは私のものではない。
ここは私のものではない。
悔しかったら、自分の手で生み出すしかない。
ここの正義は、私とは違う。
ここの場所では、
私はあくまで駒でしかない事を骨の髄まで理解した。
駒であれば、この国を創り上げた王の命に従う事。
ここの正義を尊重する以外に生きる道はない。
みんな悪かったなあ。
ここまでだ。
ここまで。
やれること全部やったが、
俺に力がなかったんだ。
みんなもずいぶん傷ついたな。
そう、完全なる敗北の時だ。
敗北の戦局は、完全に敗北として終わった。
終わった。
終わった事を受け入れた時、
私は天を仰いだ。
そして天意を知ろうとした。
ああ、天はただ広く大きくて、
ただ静かだった。
私には当然、
天意などを計り知る事など出来なかった。
世界は矛盾と混沌に満ちており、
私はその国の王から、次の王になる冠を頂く事を伝えられた。
正直に告白しよう。
私はその冠に心が揺れ惹かれた事を。
でも本当の事は知っている。
その冠はかりそめのもの。
イバラの冠。
その冠を頂く事は、
現世での魂が永遠に奴隷になる事を知っていた。
その冠では、まことの王にはなれない事を。
その冠は、イバラの冠。
着けたものだけが知る、
痛みの冠。
それが分かっていても、
私は生きてゆかねばならぬ。
私自身だけの事であれば、
迷う事なく、そのかりそめの冠を捨て、
野にくだる事も出来ただろう。
しかし、
私にはまだ小さな命たちを背負っている。
私が魂を封じ込めさえ出来れば、
罪のない命たちの安全は固く長く約束されるだろうから。