春は思いのまま(I)
冷たい風の中に温かさを感じる。
世界は灰色から移り変わり、
色めいて見える。
梅が咲き始め、
大地に新しい緑が芽吹いてる。
自分の身体も冬仕様の硬い身体から、
温かい春を迎えるための、
柔らかな身体に移り変わるように、
ふらふわと落ち着きがない。
だから、心もきっとおんなじで、
きっと揺れているんだ。
何にもやりたくない。
何もやる気にならない。
じゃあそれならばと止まってみても、
何故か悲しい気持ちが湧いて出る。
過去の悲しかった出来事が、
胸や喉元の痛みと共に、
ふとした瞬間に蘇る。
長い間、
思い出しもしなかった事。
悲しい出来事を心の中で、
氷のように凍らせて、
誰もがなんとか生きて来たんだ。
その悲しい氷が、
春のあたたかな空気で、
溶け出してしまったのかもしれない。
訳も分からず、
悲しかった気持ちを追体験している。
そんな時間が突然増えた。
私の心は言葉を重ね合う。
悲しかったよ。
一人で頑張ったんだね。
よく見せないでやってきたね。
我慢したよ。
まだ子供だったのに。
まだ子供のままだったのにね。
本当は泣きたかったんだ。
手足がボロボロだったね、
見つからないように隠したんだね。
一人で頑張って来たんだね。
ごめんね、
厳しすぎたね。
ごめんね、
俺にもどうしたらいいか分からなかったんだ。
平気なフリをしてみても、
平気な時なんて、
一度もなかったよね。
胸が痛いね。
言葉を沢山呑み込んできた喉の奥が痛いね。
痛いね。
優しく出来なかった俺を、
許してくれるかい?
春の空気にさらされて、
疼く胸を一人、
抱え込む事しか出来ないみたい。
涙が出そうになって、困ってる。
でもうまく泣けもしないよ。
ああ、どうする事も出来やしない。
こんな風になっちまったのは、
きっとそれは、
この春のせいだ。
ネコヤナギの花言葉
「自由」「努力が報われる」「親切」「思いのまま」
猫柳という名前は、花が猫のしっぽのようにふわふわの毛に覆われている事に由来します。
この猫のイメージと結びついて「自由」「思いのまま」という花言葉が付けられたとされています。