『令和2年の蛍』by s
雨が降りはじめた。
今日も次の日も。
そろそろ、あの季節。
『こんにちはホタルが少し飛ぶようになりました』
と、連絡を頂いた。
蛍で毎年お世話になってるOさんからだ。
ああ、そうかと、
俺は少し物思いにふけった。
今年で何回目だろう。
生々流転。
諸行無常。
その中でも変わらないものがある。
いや、そんなものはないか。
週末行けるだろうか。
2020年の6月。
紫陽花も咲きはじめている。
この年の事、忘れないだろう。
一日中雨が降っていた。
強い雨だった。
地面はぬかるんで、
小さな川の様な場所もある。
夕方。
長女が、強い雨の中、傘をさして、
外に歩き出していた。
私はその様子を二階の窓からぼんやりと見つめた。
長女は、空を見上げて、
傘を放り出した。
雨をシャワーの様に浴び気持ち良さそうな顔をした。
そして、何やら、
サンダルを脱ぎ始めた。
雨の水が溢れ出している場所に裸足なり、
水に足を浸けて、微笑みを浮かべた。
今日行けるかな?
雨は降ったり、止んだりした。
雨は止んでいたので、19時過ぎ出発。
山に向かって走る。
車内は冷房をかけないと蒸し暑い。
子供達は、もう眠そうだった。
途中、雨が降った。
今回は難しいかな。
目的地に到着。
小雨の降る中、歩いてみる。
いるかな?
いた!
優しい黄緑の光。
子供達も興奮の声をあげる。
蛍はそこまで多くはなかったが、
美しい光を見せてくれた。
蛍は、私と長女に青い光を揺らして、
とまってくれた。
綺麗だね。
ちゃんと見たか?
今年の蛍。
未来という今を信じよう。