『さようなら、旅の相棒よ』~インド再入国バラナシへネパールポカラの湖byS 旅の相棒とカヌーを漕ぐ
無事、トレッキングを終えた夜に、私とキムは祝杯をあげた。
久しぶりにアルコールを飲み、酔っぱらった頼りない頭で、ネパールで過ごす数日間
私の思考に湧き上がっていた事を決断した。
「キムと別れて一人で旅をしよう」という事を。
理由がある。
2人の旅は安心で快適すぎるのだ。
何の不安もないが、危険や不安な環境にさらされない事で、私の心のセンサーは鈍っていく。
安心を引き換えに、大切な何かを失っていると感じていた。
私がしたいのは「観光」ではなく「旅」なのだ。
私にとって、旅とは『迷いながらも自ら決断し、選んだ結果を味わう事』だ。
翌日、インドに再び入国するために向うバスの中で、キムに『一人で旅をしたい』旨を伝えた。
キムは私と旅を続けたいと思ってくれているようで、「一緒にデリーに行こう」としきりに誘ってくれた。ありがたい気持ちは山々だが私は断った。
そして別れの時が来た。
私は『バラナシ』キムは『デリー』。
それぞれが駅のホームに立ち、『また、いつか会おう』と別れを告げた。
キムがいなければ、ネパールやトレッキングも経験できなかったろう。
本当にありがとう、楽しかったな。
俺たちはいい旅の相棒だったよな。
一人でホームに立った時、不安はもちろんあったが、『心と体が喜んでいる』感覚を味わった。
バラナシを目指す列車に乗った。
乗車席は、「噂の自由席※」に乗ってみた。
※いろいろ半端じゃないので、賢い旅行者は避ける。
常軌を逸した混雑ぶりに耐え兼ね、現地の兄ちゃんがしているように、
私も荷台の網の上にのぼり、体を強引に突っ込み、自分の席とした。
非常に快適だった(笑)
網の上で、兄ちゃんと目が合い『おまえ、なかなかやるじゃないか』と言ってくれた気がする・・。
キムがいた時とは考えられない『不安、恐怖』と『決断』と『ドラマ』を味わいながら、
私はついに聖なる河『ガンガー』がある街、
『バラナシ』に到着した。
ヒンドゥ―教の聖地である。
河そのものが、ガンガーという女神さまなのだ。
インドの神話では、ガンジス河は天国(ヴィシュヌ神/ブラフマー神⇒シヴァ神)から流れ出てており人類の罪を洗い流すと信じられている。
ヒンドゥー教徒は、この地で灰になり河に流される事は最上の喜びであり、巡礼者はこの街に『死ぬためにやって来る』のだ。
この河の水は全てのものを浄化するため、この世の苦しみから解き放たれ涅槃に至るとの事。
ほんじゃあ、俺は何としても行かねばなるまい。
バラナシに着くと、商売人数十名に囲まれた。
日本人と分かると、数をたのんだ商売人達は、態度がデカくなった。
こちらを舐めきった態度にムカムカしていたが、「ふーはー」と我慢していた。
その内、調子こいたインド人の一人が俺を脅すように、
笑いながら、俺のリュックを掴み、肩をバンバンと強く叩き始めたので
俺はそいつの手を払った後、背中を思いっきり
「バチーン」と叩き返してやった。
すると一瞬で、群れていた人が波が引くようにサーっといなくなった。
「はー清々した!!」
後は善良なリキシャが残り、目的地の宿まで適正な金額で連れて行ってくれた。
さあ、行くぞ。ガンガーが俺を待っている!!
つづく(15話/全18話)
『あなたへ』
物語では、スマートにキムとお別れをしました。
が、英語を喋れない私が、簡単に「一人で旅をしよう」なんて思えた訳はありません。
実際は、理性/合理性VS衝動が戦争を起こしていました。
※もう一人の合理的な俺は
「おめーいつもカッコつけんじゃねー!英語も喋れんくせに!何にも一人じゃ出来ねーだろうが!!今から一緒に行って下さい。とお願いしてこい!この愚かもんが!!お前のラッキーがいつまで続くと思うなよ!!」
とかなり怒ってました。
しかし不思議な事に理性的な言葉は、たいてい衝動に勝てないのです。
もしかして、『あなた』もこの気持ち分かってくれますか?
まあ、頭ではいろいろうるさく言うかもしれませんが、
いいじゃないですか。
あなたの
好きなモノを食べて。
好きな場所に行って。
好きなモノを選んで。
後悔なんてしなくていい。
きっと、心も体も、喜ぶことでしょう。
今日も読んでくれて、嬉しいです。
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